第87話 小さなヨットを粋に乗りこなす

粋ですね。ある初老の方、ヨットだけやってるわけじゃない。
気分が良くなるものなら何でも挑戦する。ヨットはそのひとつ。
だからヨットに全てを求めようとはしていない。

ヨットで遠くを目指すつもりも無い、苦労してヨットで行くぐらいなら
車で行って、現地でヨット借りられたらその方が楽しい。邪道ですか?

彼のヨットはクラシックな28フィート、船齢は不明、でもピカピカのチーク
こうなったら船齢なんかどうでも良い。とにかく使い込まれて、磨かれて
美しい。

船内には何も無い。必要最低限の装備だけ。便利さや快適さを求めて
ヨットに乗るわけじゃない。快適さなら家にいた方がよっぽどまし。
移動に便利なら、車を使う。

たまには格闘する事もあるけど、滑らかに、思ったとおりのセーリング
ができた時は何物にもかえがたい。

行き先はいつも出てから決めるんだ。風向きによって方向を決める。1,2時間
で出かえってくる時もあれば、50マイルぐらい行ってしまう時もある。
その日の気分次第。

乗らないで、メインテナンスばかりしている時もある。これも気分次第。
スケジュール組んで、スケジュールとおりやるのはあまり好きじゃないんで、
全て気分次第。何かを達成しようとか、そんな事はさらさら思わない。
良い気分を味わえるかどうか。それだけ。

粋なヨットと粋な老人、実にかっこう良かった。乗ってる姿は実にさまになってる。
他人の事は気にしない。
乗りたい時だけ乗る。
何かを達成しようなど思わない。
物を追えばキリが無い。
したい事だけする。
嫌な事はしない。
メインテナンスは好きだからする。
全部、自分の責任でする、又はしない。
速いヨットを追えば、キリがない。だから、自分のヨットをより速く走らせる
方法を考える。
失敗しても良い、最後には必ず調和する。


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