ブームバング
セールのドラフトの深さ調整、セールのツイスト調整、それを今度はヨットが走る角度に合わせて、セールの角度を調整する必要があります。 ちょっと面白いサイトがありますので、ちょっとセール角度調整を遊んで頂きたいと思います。これには風の角度とスピード、ヨットのスピードが表示され、ヨットの走る角度とセール角度を変える事ができます。セール角度を変える事によって、スピードが変わりますから、その最も速いスピードがどのぐらいの角度になるのか?ちょっと遊んでみてください。 http://www.nationalgeographic.com/volvooceanrace/interactives/sailing/index.html ヨットが走る方角によって、セールの開き具合を調整しなければなりませんが、ジブセールを開くには、シートを出す事になります。上り一杯で、シートを一杯引き込んだ状態から、徐々にセールを出すわけですが、シートを出せば当然ながらセール形状も変わってしまいます。残念ながら、ジブセールはセール形状を変えずに、角度だけ開くという事ができません。せいぜい、リードブロックの位置を下げるぐらいです。それで、上りにしか使えない。使えない事は無いのですが、効率は非常に悪くなります。それで、スピネーカーやジェネカーという別のセールを使う事になります。 一方、メインセールはと言いますと、ブームがあるお陰で、全方向の角度にそのまま使う事ができます。セールを外側に押し出しても、ブームエンドからアウトホールでセールを固定しています。 メインシートトラベラーを使って、左右にブームが上に上がる事無く、移動させる事ができます。セールのドラフト調整、ツイスト調整、それらをそのまま変化させずに左右に移動できるわけです。でも、もっと外に出したら? ブームの前の方、マストの根元のところに、ブームバングという装置がありますが、ブームがもっと外に出たら、このブームバングの調整で、ブームの上下を調整できます。バングを引けば、ブームエンドが下に下がり、リーチにテンションがかかります。バングを緩めれば、その逆です。従って、メインシートトラベラーが及ばない範囲になりますと、このバングを使って調整できるようになっています。つまり、バングを締めたままメインシートを出しますと、ブームが上に上がる事無く、外に出る という事はセールの形を変える事無く、角度だけを変える事ができる事になります。 クローズで走っているとします。風が弱くなってきたので、バックステーアジャスターを少し緩め、ドラフトを深くします。ジブのリードブロックを少し前移動、シートも少し出す。メインのアウトホールも緩め、メインシートトラベラーでブームを少し風下に落とし、スピードをつける。スピードが出てきたら、引き上げて、ヨットが走る角度を稼ぐ。 今度は風がでてきた。ジブのリードブロックを基本位置にセット、シートを引く。メインはトラベラーを引き上げて、上り角度を稼ぐ。この時、船体のヒール角度が20度から25ぐらいまではこれで走れます。これはヨットの性能に寄る事になり、同じ風でみんな同じヒール角度になるわけではありません。 風がもっと強くなってきて、バックステーを引いて、ドラフトを浅く、アウトホールも引いてフラットにします。それでもヒール角度が大きいなら、ジブのリードブロックは後方に移動させて、リーチを少し開く。メインはシートを出して、リーチを緩め、トラベラーで引き上げる。 今度は、走る角度を変えてみましょう。少し風下に落とす方向に舵を切ります。ジブはシートを出す。メインはトラベラーが有効である範囲内ではトラベラーで落とします。もっと風下に舵を切る。セールはもっと出さなければなりません。トラベラーの範囲を超えたら、ブームバングを締めて、ブームの角度が上がらないようにして、ブームを外側に出します。風が強くなったら、バングを緩めて、ブーム角度を上に上げる。するとリーチが緩みます。 ジブセールは風が強い時は何とか横風ぐらいまでは使う事ができますが、風が弱いとセールがきれいに開けません。ちなみにレース用のヨットはジブをファーリングにせずに、微風用、強風用とか数枚のセールを持ち、適宜交換して対応しますが、通常はファーリングですので、こういう場合は仕方無しという事になります。 こういう時に、ジブを外側に押しやる艤装があります。ウィスカーポールというもので、棒の片方はマストに設置して、もう片方をジブのクリューにかけて外側に押し出すわけです。でも、このままジャイブはできません。このジャイブもできるようにしたのがジブブームです。 これで、一般的ヨットに使われる艤装及びその役目は殆ど紹介できたと思います。もう少し突き詰めますと、もうひとつ紹介したい艤装があります。これも設置するかどうかはオーナー次第なのですが、強風時には、ハリヤードがセールにかかるパワーによって伸びます。伸びますと、セールのドラフトが後ろ側に後退しますので、ヒールモーメントが大きくなります。後退したドラフトを前側に移動させるには、ハリヤードを引けば良いのですが、この場合はラフのみならず、リーチにもテンションをかける事になりますので、リーチが閉じる事になります。それで、ジブはリードブロックを少し下げて開く。メインはシートを少し出して開いて、トラベラーで引き上げる。メインセールには、カニンガムというラフ部を下から下げてテンションをかける方法があります。これですと、リーチに影響を与えません。でも、殆どの一般クルージング艇にはこれがありません。必要と思われる方は簡単に設置できますので、やってみてください。 他にもありますが、まあ、一般的艤装というのはこれぐらいです。カニンガムは兎も角、セーリングして遊ぶなら、バックステーアジャスターはあった方が良いとは思います。ただ、典型的クルージング艇ともなりますと、マストが非常に太いのがあり、これを曲げるのはなかなかどうして大変かとは思いますが。 |