エンジン

エンジンは船外機とインボード(船内機)エンジンがあります。小さいヨットには、エンジンをコクピット下に収納するスペースが無いので、スターン(後部)に外掛けで設置されています。だいたい25フィート以上のサイズですと、インボードエンジンが増えてきます。

船外機はガソリンエンジン、インボードエンジンはディーセルというのが相場です。エンジンは補機と呼ばれ、通常は、マリーナからの出港とか、入港とかに使います。狭いマリーナですから、セールで出入りは難しい。小さなヨットですと、海外ではエンジン無しというのもありますが、日本では学生がよく乗ってるディンギーぐらいでしょうか。エンジンは補助的役目という事になります。セールがメインのエンジンです。

さて、出入港はエンジンを使う。これさえ使えば、どうにでもなると思いきや、そうはいきません。ヨットが方向転換するには、舵を使います。その舵は板状で、そこに水流が当たる事によって方向が変わります。ヨットが停止状態だと、いくら舵を切っても方向転換はしない。当たり前なのですが、桟橋から離れる時、エンジンを後進に入れます。するとゆっくりヨットはバックします。ゆっくりという事は、水流もゆっくりです。舵に当たる水流もゆっくり流れます。

ヨットにはブレーキが無いと書きましたが、ブレーキの代わりに、エンジン操作で同じ役目をさせます。後進でゆっくりバックして、それから前進にギヤを入れ替えますと、ヨットは一旦停止して、全進し始める。それで舵を切って、行きたい方角に進めば良いのですが、バックして、一旦停止して、それから前進する。風が強い時、舵を切っても流されて進みたい方向にバウが向かない。風に負けてバウが風下に流れる事があります。これが最大の難関です。停止した状態から、すぐにエンジンを前進に入れても、水流が弱い為に、方向を変えてくれない。その場所が広ければ、エンジンさえふかせばバウは大きく円を描いて、思う方向に向いてくれます。しかし、狭い場所で、くるりというわけにはいきません。風が強い時は、バウは風上には向かないと考えた方が良い。どの程度の風かは、教えてくれる人に習ってください。

ヨットを後進させて、今この風向だと、そのまま停止した時、ヨットのバウはどっちに向くだろか?それが行きたい方角に流されるならOKです。バウを風下に流して、エンジンを前進に入れて出れば良い。しかし、この逆なら、無理にバウを風上に向けないで、後進で、ある程度広い場所まで出る練習もしておいた方が良いと思います。バウは風下に流れますから、風が強い時、流される方向が行きたい方角では無い時、後進で出る。教えてくれる人が居るうちに、例え、ぶつけそうになっても、その人がささえてくれますから。

エンジンのギヤを入れますと、プロペラが回って水流を造る。前進する時は、その水流が舵に直接あたります。舵のすぐ前にプロペラがあります。ですから舵効きは良くなる。でも、後進ですと、水流は前側に流れますから、舵には当たらない。という事は、後進時に水流はヨットの移動によってのみ起こる水流しか当たらない。従って、後進時はヨットが動いてないと、舵は全く効かないという事になります。

一方、前進側は、プロペラの水流が舵にあたるので、スロットルを上げると、水流がその分舵にあたりますから、前進の方が移動距離が短くても、舵は効き易い。

そこで、舵を一杯に切ってスロットルを前進に瞬間的に大きく上げて、すぐに戻してみてください。すると、水流が大きく動きますが、ヨット本体は殆ど前進せずに、舵を切った方向にバウを向ける事ができます。水流が舵に当たって、舵が切れていますから、その方向に殆どのパワーが働きますから、バウの回転に働きます。狭い場所での方向転換には良い方法です。但し、スロットルをだらだら上げたままにしておくと、前進しはじめて、狭い場所では、前にどかんとぶつかりかねませんから、瞬間です。パッと上げて、パッとニュートラルに戻す。一度で思う方向まで行かない場合は、何回かに分けてやるつもりで。でも、風が強い時は無理です。風には逆らわないでおきましょう。

狭い場所でスロットルを目一杯上げるのは怖い。でも、教えてくれる人が居る間に試してみましょう。或いは、マリーナの外ででもやってみましょう。ポイントは瞬間的に目一杯上げて、すぐにニュートラルに戻す事です。最初覚えておきますと、何かの時に役立つと思います。

兎に角、マリーナからの出し入れに慣れる事。この最初の最大の難関さえ慣れてしまえば、後はこっちのものです。セーリングする事が楽しくなります。

マリーナに帰ってきたら、係留されている他のヨットの風見を見て、風向を確認します。自分のヨットの風見は前進していますから、風の方向が違います。前進の影響を受けてます。それで、桟橋に横付けするまでは、舵は良く効きます。それゃあそうです。走り続けていますから。水流が十分舵に当たっています。それで桟橋に横付けして、バックギヤに入れて停止させる。停止を確認するまで大きくバックに入れて、停止確認したら、ニュートラルに確実に入れる。時に、バックに少し入ったままの時があります。すると、ヨットが逃げて行きますね。
ヨットから降りたら、風上のロープを一番にかけるのが普通ですが、バウとスターンのクリートにかけたロープを持って降りて、すぐに桟橋のビット(クリート)にかけるのが良いと思います。ひとりで乗るなら。

今は、誰かと一緒ですから、その人がロープをとってくれますが、先々ではひとりでもできるようになる事をお勧め致します。シングルハンドと言いますが、ひとりで全てができるようになった方が、先々はいろんな場面を楽しむ事ができるからです。誰か居るうちに、ひとりだとどうしたら良いかを考えてください。実際に乗りながら、いろいろ相談してみてください。たとえ、ひとりで乗る事が無いと思っても、一緒に乗る方が全くヨットを知らない場合は、全部ひとりでやる事になりますから。それに慣れておきますと、誰でも、気軽に誘う事ができます。そういう意味でも、大きなヨットはそれが困難になります。今のうちに、エンジンのコントロールに慣れておきます。すると、将来、もう少し大きなヨットに買い換えても、すぐに慣れる事ができる。

このシングルハンドは難しい操船になるかもしれません。でも、これに慣れてしまうと、後はどうにでもなる。最初からとは行きませんが、いずれはシングルハンドという操船を目指した方が良いと思います。ひとりでマリーナからの出し入れができるようになったら、それに越した事はありません。

マリーナから出す時、後ろが広ければ、出るのは簡単になります。狭いとそれだけ難しくなる。これはマリーナ次第です。でも、狭いマリーナに置くようになったら、仕方ありません。でも、その事で、確実にうまくなるはずです。悪い事ばかりじゃない。

マリーナさえ出れば広い海です。ばたばたする事はありません。ここまで来れば、ヨットはかなり面白くなります。誰かひとり別に、ヨットが解った者が居る時、これはそうは難しくはありません。すぐに慣れるでしょう。でも、ひとりを目指してほしいので、そこには少しハードルが高くなります。しかし、そこまでやってしまえば、後は自由自在になりますので、できれば目指してほしいと思います。

次へ       目次へ