セーリング
マリーナからの出港に緊張しながらでもできるようになったら、そして、エンジン走行も慣れたら、いよいよセーリング開始です。 セーリングは風をセールに受けて、それで走る道具です。風は弱い風からとんでも無い強風まで、大きな幅があります。その時の風次第で、どのくらいの量の風を受けるかを調整して、その吹いてくる風の角度に対して、セールをどういう向きに設定するか?簡単に言えば、それだけです。 風が弱い時、できるだけ多くの風をセールに取り込むようにしますし、風が強すぎるなら、風の取り込み量を減らして、調整を図る。そのセールを今度は風に対してどういう向きにしたらベストかを探るわけです。セーリングでやる事はこれです。 セーリングの良い所は、この調整の仕方が、簡単な方法から、レベルの高い方法まである事です。もちろん、簡単な方法でやるより、レベルの高い方法の方が効率は良い。でも、簡単な方法でやっても、セーリングを楽しめる。そこが良いところです。ですから、始めたばかりの方、多少は慣れていないから、緊張はするでしょう。でも、簡単な方法を使って、セーリングをすぐに楽しむ事ができます。そしてすぐに慣れていくでしょう。 慣れてきたら、少しづつレベルアップしながら、より高いレベルの調整の仕方を覚えて、質の高いセーリングを目指していきます。生涯、学ぶ事になります。限りなくレベルアップする事ができます。それで、各段階においても、そのレベルで楽しむ事ができる。レベルアップしたら、そのレベルでまた質の上がった楽しみ方があります。従って、セーリングは初心者から、ハイレベルの人まで遊ぶ事ができます。でも、同じセーリングですが、質が違う。徐々に、質を上げていきながら、長く、長く遊ぶ事ができます。セーリングは、風の取り込み量と角度のふたつです。そう覚えておいてください。 現代のセーリングは昔と違って、風に押されて走るというわけではありません。風をセールに流して、揚力と言われる力を作り出し、その揚力で走ります。風を流せば揚力が自然に造られます。 そういう理屈になっています。あまり気にしないでください。理屈は知らないでも走る事ができます。 飛行機も揚力で飛びます。全てのパイロットが理屈をきちんと理解しているかどかは解りません。 知らないでも、ちゃんと飛ばす事はできます。エンジンの構造を知らないでも、車を運転できますから。心配無用です。興味ある方は、そういう本を読んで楽しんでください。 自転車はおじいちゃんでもおばあちゃんでも、子供にだって乗れます。それと同時に競輪選手だって乗る。違いは速いかどうか。ヨットも同じです。初心者だってすぐに乗れるようになります。効率が良いかどうかです。自転車と違って、うまくなればなる程、楽に乗れるようになる。たいして体力も不要です。多少は要りますが。 細かい理屈は抜きにして、基本は上げたセールに風を流す、風がきれに流れるようにする事が重要になります。ジブとメインの両方に、できるだけセールがバタバタしないように、そしてきれいに流れているかどうかの目安は、セールにリボンがついてます。このリボンがきれに横に流れるようにします。まあ、最初からは無理なので、このリボンの事はあまり気にしないでください。 理屈は簡単です。風が右から吹いてくれば、風に押されてセールは左(風下)側に行きます。それだけで、ヨットは走ります。違いは何かと言いますと、風の力をどれだけ効率良く使えるかどうか?それによって、走るスピードが違ったり、ヒール(傾斜)する度合いが違ったりします。ヨットがより速く走るという事は、それだけ風をうまく利用している事になります。セールはふたつの側面から見る事になります。ひとつはセールの形です。形をどう整えるか?それとセールを風に対して、どういう角度に設定するかのふたつです。まずは、形は気にしないでおきましょう。角度から先にやります。セール形状は後で、今は忘れてください。 風が右からなら、セールは左。問題はどの程度左側に出すかになります。風の角度に対するセールの角度という事になります。これはジブセール(前のセール)はジブシートというロープで、メインセール(後ろ側のセール)はメインシートで、そのロープを緩めれば、セールは風に押されてもっと外側に移動しますし、出した角度は大きくなります。シートを引けば、セールが内側に近づいてくる。最初はこれだけで良いと思います。この操作だけで、風に対する角度をいろいろ変えてみて、最もスムースと思われる位置はどこかと観察してください。 これだけで、セーリングはできる。これだけでも楽しむ事ができます。セールが風でバタバタしない程度のセール角度を、ジブシートとメインシートを出したり、引いたりして観察してください。簡単でしょう?すぐにセーリングを味わう事ができるんです。 おっと、その前にセールを上げなくちゃいけません。エンジンで広い海に出たら、スロットルを落として、ゆっくりしたスピードで、風の吹く方向にバウを向ける。そういう舵取りをします。風が吹いて、波があって、油断してますと、すぐに風下に流されるかもしれません。真っ直ぐに、真正面に風に向かうように舵取りをします。何故、そうするのか?この何故がいつも大事です。 セールを上げると、風がセールにあたります。もし、真正面の風で無ければ、風はセールの右面か左面を強く押す事になります。押されれば抵抗ができて、セールを上げる時に抵抗となって、上がらなくなるからです。一度経験しますと、誰でもすぐに、なるほどと思うはずです。ですから、セールの左右均等に風があたるように、この時ばかりは、セールがバタバタしますが、それで良いわけです。最初は手で引いてあげる。そのロープはハリヤードと言います。いろんなロープがありますが、同じロープでも、セールを上げる為のロープはハリヤードと言い、メインセールを上げるロープはメインハリヤード、ジブセールを上げるロープはジブハリヤードです。 最初は手でロープを掴んで上がるところまでさっとあげる。きつくなったら、ウィンチに巻いてウィンチハンドルを回して、天辺まで上げる。そして、最後にウィンチハンドルで、セールに縦皺も横皺も入らない程度まで、強く回して、テンションをかける。メインもジブも同じ理屈ですが、ジブはファーリングシステムの場合が多く、既に上がった状態で、フォアステーにぐるぐる巻き状態ですから、上げる必要が無く、ジブシートを引いて、セールを広げるだけです。ファーリングの関係は、現物を見られたら、すぐに解ると思います。 さて、ちょっとだけ注意点があります。良く観察すればすぐに解る事です。ハリヤードというのはセールを上げるロープです。ところが、セールが設置してあるブームには、下側からブームを引っ張る役目のロープがあります。メインシートとブームバングです。この2本のロープが、ブームを下側に一生懸命引っ張っている状態ですと、ハリヤードでセールを上げるも、途中で動かなくなる事があります。それはセールと一緒にブームも最後は少しあがるはずなのに、下から引っ張るロープがそれを阻止する。ですから、メインシートとバングは緩めておかなければなりません。上げた後で、引きます。 さあ、これでセールがあがりました。セーリングです。ここでエンジンを停止します。セールを上げてから、エンジンは停止です。順番があります。理由は、風上に立てる位置をキープしなければなりません。これはエンジンでやります。それで、セール下ろす時も、下ろす前にエンジンをかけます。 風上に立てる為です。もうひとつ、セールを下ろしたが、もしエンジンがかからなかったらどうします?先にエンジンをかけた方が良いわけです。安全の為に。もちろん、セールを下ろす時も風を真正面に。理屈は上げる時と同じです。 エンジンを停止した後、エンジンのギヤを後進にいれておきます。セールで前進すれば水流がおこる。これでプロペラがこの水流で連れ回りしないようにする為です。連れ回りを続けますと、エンジンのギヤを傷めるかもしれません。ギヤを入れて、プロペラが連れ回りしないように、固定してしまいます。でも、今度エンジンをかける時、ギヤがバックに入っている事をお忘れなく。 これで、後は舵を持って、真っ直ぐセーリングで走る。セールの角度はそこそこに、バタバタしていなければOKです。まずは、この状態でしばらくは楽しんでみましょう。行きたい方角へ舵を切る。真っ直ぐ、真っ直ぐです。それに合わせて、ジブシートとメインシートを緩めます。角度はセールが風でバタバタしないくらいの適当で良い。それより、今は初めてのセーリングを楽しみましょう。 何と気持ちの良い事か。もし、天候に恵まれ、程よい風の時なら、実に爽やかな気分、陸上では無い、海の上を滑るように走る気分は最高です。存分に味わってください。 多少慣れてきましたら、風に対するヨットの進行方向をいろんな角度で試してみます。操作するのは、舵とメインシート、ジブシートの3つです。或いは、最初は、2枚あげなくても、メインセールだけでも良いかもしれません。そうしましたら、舵とメインシートのふたつだけ。それでセーリングを遊ぶ事ができます。実に簡単そうでしょう?実際簡単ですから、是非、トライしてみてください。 ヨットにはたくさんのロープがあって、複雑そうで、難しそうですが、でも、舵とシート2本のロープだけでも帆走を楽しむ事ができます。簡単でしょう。もちろん、他のロープは飾りではありません。ちゃんと役目があります。でも、今は忘れましょう。まずは、セーリングの楽しさ、面白さを味わってください。 |