舵について

残念ながら、文章を読むだけでは、特にこれから始めようという方にとっては、何が何だか解らないかもしれません。写真や絵でも載せれば良いのでしょうが、なかなか適当な物が無く、できれば、実際のヨットの実践を並行して頂けるとご理解頂けるのではと思います。これからヨットを始めようかという方々のお誘いではありますが、やはり実践と伴わないとなかなか解らないと思いますが、このまま続けていきます。そのうちどこかで役に立つかもしれません。

メインシートとジブシートのみを使って、セールの角度を調整します。この時、舵に注意してみます。風が吹いてくる方向に対して、一定角度を保って走ります。その舵がふらふらしていたのでは、セールに当たる風の角度もふらふらする事になります。風の進入角度がいつも変わる事になります。これでは効率の良いセーリングはできませんから、舵操作で、ヨットが真っ直ぐ走る事が基本です。

ヨットが同じ方角に真っ直ぐ走る。これが基本になります。この基本が無いと、何処にあわせるのか?という事になります。ヨットの何かが一定である事が基準になります。基準が無いと合わせようが無い事になります。まずは、舵操作で、ヨットが真っ直ぐ走る。これが基本。全てはこの基準に合わせる事を考えます。

ヨットが真っ直ぐ走る時、風がある角度から吹いてきます。その風の角度に対して、どのぐらいのセール角度を保ったら良いのか?その角度の調整は、ジブシートとメインシート。セールの形はまだ考えません。角度のみです。

風が右から吹いてきたら、自動的にセールは左に行きます。さて、今走っている状態から、セールは引き込んだ方が良いのか、或いは、逆にもっと出した方が良いのか?まずは、セールを出したり、引いたりして、とりあえず、セールが風によって、バタバタしないようにする。基本的には、ヨットの進行方向と風のヨットに対する進入角度の半分の位置にセールを出す。例えば、風が右の真横から吹いてきているとしますと、ヨットの進行方向に対して、風の進入角度は90度になります。頭の中で場面を思い浮かべてください。この場合、セールは左側に45度出す。ブームが真ん中の時は0度、そこから45度外に出す。だいたいで良いです。この要領で、他の角度の時も半分と考えます。

今度は、ヨットの進行方向に対して、真横からの風では無く、風が右斜め前側に移動したら、そういう舵取りをした時、ヨットの進行方向と風の角度は90度より小さくなりますから、その分、セールも内側に引き込み、逆に風の角度が斜め後ろからの時は、セールを外に出す。それだけです。

舵操作で、真っ直ぐある程度走る。その時の風の角度に対して、セール角度を調整します。そしてしばらく走ったら、今度は舵操作で進行方向を変えてみます。風に対して上ってみる。舵を少し切って、ヨットを風上側に上らせてみる。それに合わせて、シートを引いて、セールを内側に引き込みます。今度は逆に、下ってみる。変更後はまた真っ直ぐ走るのが基本です。そして、その時の風の角度に対して、シートを緩める。すると風の力をセールが受けて、風下側に移動します。セールがバタバタしない位置を探してください。調整は一機に大きくでは無く、少しづつやってください。ぴったり適切にとはいかないかもしれませんが、だいたいで良い。すぐにできます。しばらくは、そうやって遊んでみてください。走る角度を風に上ったり、下ったり、それに合わせてセールを調整します。

メインセールはブームがあります。角度が明確に解りやすいのですが、前のジブセールは丸くカーブを描くだけですが、取り合えず、メインセールのように、風に向かう(上る)時は引き込んで、下る時は出す。セールがばたばたしないように。やってみたら、簡単にできます。

当然ながら、風は右から当たる時もあれば、舵で方向を大きく変えれば、左から吹いてくる。右と左と同じ理屈で、反転しただけです。という事は、セールが左から右側に変わる瞬間、舵による方向転換によって、右と左が反転する瞬間があります。この反転する瞬間に、セールは一機に右から左へ、或いはその逆へと移動します。今度は方向転換です。

コクピットの風上側に座ります。そしてティラーを片手で握る。或いは、ステアリングホィールのヨットの場合でも、風上に座ってホィールの端っこを片手で操作しますが、とりあえずはホィールの真後ろに立って、ホィールを握っても良い。車のように。

右真横から風を受けて、セールは左に出しているとします。舵を少しづつ風上に上るように切る。それに合わせて、セールを内側に引き込みます。この時はまだもう一人誰かがそれをやってくれる。ジブセールはマストを支えるワイヤーのステイにくっついたら、それ以上は引き込めません。メインセールは船体の中央まで引き込んだら、それが限度です。この状態で、舵操作で風に対して切り上がれる角度の限度があります。これ以上は風上に上れない角度です。これがそのヨットの上り角度の限界になります。クローズホールドという走り方で、風を最も感じる走り方です。限度ぎりぎりで走りますと、舵を少しでも風上側に切ったりしますと、セールがばたばたしてきます。でも、これ以上セールを引き込む事はできませんから、ぎりぎりを走るのは、集中しなければなりません。緊張感が漂う。でも、これがまた良い感じになります。

では方向転換をしてみましょう。もっと上らせて、セールをばたつかせます。舵は一挙に大きく切らないで、少しで良い。そうしたら、ヨットはゆっくり方向転換し始めます。風を前から受けて方向転換をする事をタッキングと言います。

さて、メインセールは自動的に勝手に新たな風下側に風で押されて移動しますが、通常のヨットはジブセールはちょっと作業が必要になります。ジブセールの手前側が、マストよりずっと後部にまで伸びてきていますから、そのままでタッキングしますと、セールはステイ、マスト等に押し付けられるだけです。それで、ジブセールには2本のロープが結んであります。1本は左舷に、もう1本は右舷用です。2本同時に使う事はありません。タッキング時に、セールに新しい方角からの風が入り込んだ瞬間に、シートを解放します。そして、新しい風下側のもう1本のシートを素早く引き込んで、ウィンチに固定する。ウィンチを巻き込んで、適切な角度まで調整し、タッキング終了です。これをいかに無駄無く、速やかに行えるか?これが上手、下手の差が出ます。何度もやって、要領を得ましょう。少しづつうまくなっていけば良いんですから。簡単に誰でもできます。しかし、うまい人はこれがスムース、無駄も無い。時間もかからない。より楽にやって、ピタリと決まる。うまくなれば、なる程に楽にできる。このタッキングを、右から左、左から右へと何度もやって徐々に慣れてください。タッキングする時、何をどうするか、要領を得てください。これは繰り返しするしかありません。そうやって覚えます。そうやりながら、舵を切るタイミング、シート放すタイミング、新しい風下でのシートの取り込み具合と舵の関係、そういう事も観察しながら、徐々に解ります。

方向転換にはもうひとつあります。今度は後ろから風を受けて、方向転換をする場合です。これをジャイブと言います。真横から風を受けてセールは風下にあります。舵で少しづつ進行方向を風下側に向ける。それに対して、セールは外側に出していくのですが、ジャイブをすると決めたら、逆に、セールを内側に引き込んで、真後ろから吹いてくる風を通りこして、反対側から受けるまで、舵を少し切った状態をキープしておけば、進行方向は徐々に変わり、風は少しづつ後ろに変わり、真後ろとなり、今度は反対側の後ろから風を受ける事になります。風位が変わったところで、引き込んでおいたセールを外に大きく出します。タッキングよりもジャイブの方が少し難しいので、良く習ってください。良くイメージしてください。風を後ろから受ける時といのは、セールが大きく外に出た状態で走る事になります。ですから、ジャイブ時、一旦引き込んだセールも、ジャイブ後は本来出さないといけない角度までシートを緩めて、スルスルと外側に出す事になります。風がセールを押し出してくれます。それと、メインのみならず、ジブもタッキングのように、左右を入れ替えなければなりません。タッキングはメインが自動的に右左と動き、ジブだけ自分でやれば良いのですが、ジャイブは両方の作業が出てきますので、段取りを良く考えて行ってください。実は、ジブセールというのは、後ろからの風ではあまりきれいに開けません。それで、後ろから専用のセールというのがあるんですが、これはまた、後日という事で。

慣れてきたら、360度回転してみても良いですね。右回り、左回りも、両方で。例えば、右から風を受けているとします。そしてセールを目一杯引き込んで、舵も風上に上れる限界まで切りあがって、真っ直ぐ走ります。まずはタッキングからやりますか。舵を風上側に少し切ります。ゆっくり風上に上っていき、セールはばたついてきます。ジブセールに左からの風があたり始めたら、風がセールを左から右側に押し始めた瞬間に左側のジブシートをウィチから完全に離します。徐々にではありません、完全に離します。そして、そぐに、今度は右側のジブシート(新しい風下側)をウィンチに巻いた状態で、手で素早く引きます。手で引けなくなったら、ウィンチハンドルで調整します。

これで。今度は左から風を受けた状態のクローズホールドで走る事になります。それから舵を少し切って、風下に落とす。それと同時にセールを出していきます。どんどん下って、真横、もっと下って、左斜め後ろから風を受ける。次にジャイブ。一旦シートを引き込んで、セールを内側に引き込みます。そしてジャイブ、風位を越えてきたら、シートを出して、セールを大きく外側に出す。ジャイブ前に一旦セールを引き込むのは、ジャイブする時、セールは大きく外側にでていますから、そのままジャイブしますと、メインセールが大きな角度で一挙に左右にすごいいきおいで入れ替わります。その衝撃は大きい。従って、ショックをやわらげるという意味で、一旦引き込んでから、また出す。そうしますと、ショックがありません。

ジャイブが完了したら、今度は舵で再び風上側に上ります。それに合わせて、今度はシートを引いて、セールを内側に徐々に引き込みます。再び、上りのクローズホールドまできますと、これで360度回転完了です。今度は左回りもやってみます。遊びです。練習と思わないで、遊びとして、ゆっくり、大きな、とてつも無く大きな円を描くつもりで、確認しながらやってみてください。そして、舵を切るのは少し、大きくは切らない。舵はできるだけ小さな角度で。

それと、舵は車と違って、手を放すと直進するようにはなりません。進行方向を変えたら、完了後は自分で元に戻して、真っ直ぐ走る。舵を切って、進行方向が少しづつ変わってきます。自分が希望する新たな方向になって舵を戻すと行き過ぎます。希望方角に近づいてきたら、少しづつ舵も元に戻しながら調整する。これも実践で体得してください。それぞれ文章ほど難しい事ではありません。やってみればすぐに解ると思います。舵は大きく切りません。小さい角度で。

それぞれ、いろんな注意点がありますが、それはまた後で。とりあえず、これで、あらゆる方向のセーリングと、方向転換ができるようになります。まずは、イメージとして捉え、シュミレーションを頭の中でしてみると良いです。風さえ強くなければそう難しい事ではありませんが、風が強くなりますと、パワーが大きくなりますので、注意が必要です。風のあまり強く無い日に練習してみると良いと思います。

ここまでくれば、もうかなりなもんで、最初は緊張もするでしょうが、徐々に慣れていけば、結構自由自在にいろんな方向に走る事ができます。これらも、もうひとり誰かが居てくれてシート操作をやってくれれば、そう難しいものではありません。これがセーリングの概略です。これに慣れたら、各走り方をもう少し詳しく見ていきます。これからは、少しづつレベルアップ、質の向上に向かいます。このレベルでも十分にセーリングを遊ぶ事ができますが、もっと質を上げた方が良いに決まってます。その方が面白くなります。

でも、今はここまでできるようになったところで、しばらく遊んでみましょう。ただできるだけでは無く、少し体も気持ちも馴染むように。右に行ったり、左に行ったり、タッキングもジャイブもできるだけスムースにできるように。そうこうしていますと、こういう風にした方が良いかな、とか思う事があります。それが大事なところです。ただ、言われたようにやるのでは無く、やりながら、こうした方がもっと楽にとかスムースにと、いろいろアイデアも浮かびます。知らない事は案外、ベテランが考えつきもしないアイデアを思いついたりもするもんです。セーリングは正解がひとつだけあるわけでは無く、いろいろやって、遊んで、自分の正解を見つけるものと考えた方が良いと思います。

もうこのレベルで行きたい方向に走れます。ここまで来るのに、そんなに時間はかかりません。後は、どれだけ馴染んでいくかです。それはどれだけ回数乗るかにかかってきます。ゆっくりと楽しみながらやるのがコツです。必死になる必要は無い。先は長いのですから。実を言いますと、これが多くのセーリングのやり方です。特別に難しい事をしているわけではありません。もちろん、慣れ具合は違います。ですから、このセーリングにできるだけ馴染んでください。そして、先に進みましょう。

走っている方角が風に対してどういう方角か?それは常にセールを意識しますから、解りますが、例えば、今の状態から180度後ろに変針したいと思った時、右回りが良いか、左回りが良いか?
どっちかが良いというわけでは無いのですが、タックして、風下に落とす、或いは、そのまま落としてジャイブする。新しい方角になった時、風をどこから受けるようになるのか?それも事前に解ったうえで行動に移す事も意識しておいて下さい。

少し、馴染んだところで、次のステップに進みましょう。遊びながら、少しステップを進めます。

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