風を逃がす

風の強さによって、風が弱いのでもっと取り入れて揚力を増すのと、風が強いので、風の取り入れ量を減らす。この操作が必要になってきます。風の強さ次第ですが、それはヨットの持つ能力にも関係します。自分の持つヨットがどの程度の能力かによって、基準が設けられる事になります。その基準はヨットの安定性によって異なる事になります。

前に、調整の基準として、舵操作で真っ直ぐ走ると書きました。その変わらない基準にセール調整をするという事になりますが、もうひとつ、そのヨットの性能も基準になります。ヨットは変える事のできない性能です。安定性、セールエリア、船体の重さ、形、これらは変わらない。その変わらないヨットを基準に、真っ直ぐ走る事が基準となって、常に変わる風や波との間を取りもつのがセールで、そのセール調整をする事によって、船体能力と風や波との調和を図っている事になります。

ふたつのヨットがあるとして、同じ風速の中を走るにしても、ひとつは非常に安定性が高い、もうひとつはそうでも無いとしますと、前者はもっと風が強くなっても風を逃がす必要が無いかもしれませんし、後者は風を逃がさなければならないかもしれません。そこで、自分のヨットの基準がどこにあるのか、何度も乗るうちに、そこらあたりも解ってきます。

さて、風が強くなってきたら、どうやって風を逃がすかを考えます。セールを目一杯引き込んで、クローズで走ります。今の風で、どんな具合に走っているのか?船体のヒール角度が20度から25度ぐらいで、走っているのなら良い。実はいろんな要素があるのですが、今の段階では気にしないでおきましょう。兎に角、今20度〜25度ぐらいにのヒール角度でクローズで走っているとします。
ヒール角度はコンパスについている場合もありますし、無ければ、安いので、購入しても良いと思います。

風が弱いとヒール角度が20度以下だったり、15度、10度とかの場合もありますし、風が強いと30度とかもっとという事もあります。風が弱い時は、つまりヒール角度が小さい場合は、もっと多くの風を取り入れたいのですが、風が弱いので限度があります。できるだけ多く取り入れる操作をしますが、まあ、今はこれは脇に置いときましょう。逆に風が強い時、大きくヒールしてしまう時、ヒールし過ぎです。それで、風を逃がす事を考えます。

セールを一杯に引き込んで、ヒール角度20度から25度程度、クローズで走っているとしましょう。この時の風の強さがどの程度なのか?これが基準になります。安定性が高いヨットは、これから風が強くなっても、それほどヒール角度が増えない。これは船体下のキールの重みに関係してきます。これより風が強くなってヒールも大きくなっていくなら、風を逃がしてやる事を考えます。

風はそこらあたり全部で同じ強さで吹いているわけでは無く、部分的に強い風が吹いています。海面を眺めて、海面がざわついている箇所があったら、そこに少し強い風があります。もし、波があると見分けがつかない事もありますが、海面が荒れていないと判別がつきます。そこは少し強い風、ブローと言われます。そこにヨットが突っ込みますと風が強くなる。船体はぐっと大きくヒールし、ヨットは風上側に切りあがろうとします。真っ直ぐ走らないわけです。そこで、真っ直ぐ走る為には、舵操作で風下側に舵を切ります。すると、力が相殺されて、真っ直ぐ走れます。

このブローはその場限りですから、すぐにその場を抜け出ますから、瞬間的にはそれでも良いかもしれません。しかし、舵を切った状態というのは、舵に海水の水流が強いプレッシャーを与える事になります。これは舵への負担になりますし、走るブレーキにもなります。ご存知でしょうか?空気と比べて、水の抵抗は800倍にもなります。舵へのプレッシャーは大きなブレーキとなります。良い事では無い。よって、舵操作で真っ直ぐをキープするのでは無く、風を逃がして真っ直ぐをキープした方がベターという事になります。

前方にブローがあり、そこに突入すると同時に、シートを少し緩めてください。ジブシートとメインシートがありますが、通常のヨットはジブセールがメインセールより大きい場合が多いので、その場合はジブシートを出した方が効果的かと思います。ブロー突入前のヒール角度を維持したまま、ブローを抜けていく。ブローを抜けたら、再びシートを引き込む。ブローのような瞬間的な場合はこの方法でも良いと思います。風の強さが恒常的なら、違う方法を取ります。

風がふっと上がったら、シートを出す。一旦大きくヒールした船体がぐっと起き上がり、ヒール角度が軽減されます。同時に、風上に上ろうとする力も収まり、舵もスーっと軽くなるのを感じると思います。これをブローに入る前に準備して、さっと合わせて、スーっと抜ける。

ブローを探しては、そこに意図的に突っ込んでみましょう。実際どうなのかを体感して、このシートの出し入れ、ヨットの動きなどを実感してください。すると要領はすぐに解ると思います。

シートを出したり、引いたりして角度を変えると言いましたが、本当は角度だけでは無く、シート操作はセールの形状をも同時に変えています。結果的にそうなります。これはまた後で。今は形も変わっているのだという事ぐらいに留めておきます。

さて、次は、ブローでは無く恒常的に強くなった時です。風が強くなりますと、ヒール角度が大きくなって、ヨットは風上に切りあがろうとします。それを舵で抑えるのは良くない。ブローなら、シートをその時だけ出して、抜けたら元に戻す。でも、ずっと風が強いままになったら?

シートを出して、風を逃がす。ジブもメインもです。シートをちょいと出して、それでOKならそれで良いのですが、もっと風が強くなったら、もっとシートを出す?セールの角度の事を考えますと、セールを出し続けますと、当然ながら、セールがバタバタし始める。これではいけませんので、違う方法を取ります。

ひとつは、舵を風下側に切って、走る角度を風下側に落とす。すると、風がセールに当たる角度が変わって、バタバタしていたセールが止まります。でも、これは走る角度が、風下に落ちています。行きたい方角から角度が落ちているという事になりますので、そこに近づく為に走る距離は長くなる。まあ、これは次のページにします。まずはブローまで。

ここまでで、全方角のセーリング、タッキング、ジャイブ、ブローへの対応と書いてきました。とりあえず、ここまでで、できるだけ回数多くセーリングして楽しんでください。風が強く無い時に。風が強い時は?

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