エンジンについて

ここからは、前に記載した内容と重複しますが、もう少し詳しく書いてみたいと思います。全てを知る事は困難ですが、ヨットは自分でやるのが基本ですから、出来る限り多く知る事は、自分自身を助ける事にもなります。

エンジンのギヤは前進と後進しかありません。その操作を別々のレバーで行うのがかつては多かったのですが、最近ではシングルレバーで、アクセルとギヤの両方を兼ねているのが多くなりました。その方が操作は簡単だからと思います。

もし別々の2本があるなら、注意点はひとつ。スロットルを上げた状態で、ギヤチェンジをしないという事です。これが1本なら、そういう事にはなりません。ギヤチェンジをするには、スロットルを下げないとできないようになっています。

メインテナンスとしては、エンジンのクリーニング、エンジンルームもきれにしておく事、これで、オイル漏れとかがあった場合はすぐに気がつきます。初期対処ができますから、大きな修理になる前に気がつくに越した事はありません。それに兎も角、時々はエンジンルームを覗いてみる事です。
そして、いつもちょいちょいと掃除しておきましょう。エンジンルームに水が溜まっている事の無いように。いつもクリーンに。

オイル交換、フィルターの交換は年に1度、できれば2回やればベストではないかと思います。これらはこの先何十年と使うにあたって、将来の調子の良し悪しにかかってくると思います。もちろん、時折はオイルの量も確認してください。やり方は車と同じです。

エンジンを冷やす冷却水というのがありますが、これには2種類。ひとつは海水を外から吸い込んで冷やすわけですが、このタイプにさらに、車のラジエーターのように、錆びどめとかが入った水タンクを持つタイプもあります。前者は直接冷却、後者は間接冷却と言われます。後者のラジエーターは車と同じと考えて下さい。プラスティックのリザーバータンクがあり、そこで量を見る事ができます。

両方とも海水冷却ではありますので、船底の開閉バルブが設置してあり、そこから海水を取り入れます。もちろん、オープンでなければなりません。これが閉まったままならオーバーヒートの原因になりますから、それで皆さん開けっ放しという事が多いのですが、それでバルブ開閉を長期間しないものですから、レバーが固着して、開閉できなくなる事があります。ですから、時折、開閉をして、動かしてください。これが開閉できなくなると、何らかの作業時にバルブが閉じれない事になり、簡単な作業であっても、わざわざ上架しないとできなくなる事もあります。海水フィルターをちょっと掃除したいだけなのに、バルブが締めれないとできなくなる。もちろん、バルブを見た時には、漏れなどがないかも確認します。という事はこの回りもきれいにしておいた方が良いという事です。

海水を吸引するには、ポンプが必要ですが、エンジンに海水ポンプがあり、中にはインペラというゴム製の部品がありますが、これが回転する事によって海水をくみ上げています。そしてこれは消耗品です。それにポンプを回す為にベルトがあり、また、バッテリー充電の為にオルタネーターがあり、これにもベルトがかかっています。これらは消耗品ですから、予備を備えておきますと、いざという時に役立つと思います。

次にシャフト式にはスタンチューブがあります。この事は最初に書きました。このシャフトには防蝕亜鉛(ジンク)というものが設置してあり、これは金属が電蝕という化学反応で犯されていきますので、最も化学反応が起こりやすい部品を付ける事によって、このジンクを犠牲にして、他の金属を守る役目です。ですから、このジンクはどんどん減っていきます。年に1回ぐらいは、上架した時には交換してください。

このシャフトの先にはプロペラ。このプロペラにも種類があり、最もオーソドックスなのが、2枚の翼を持つ固定プロペラです。3枚というのもあります。その他、セーリングへの影響を考えて、翼がセーリング中に閉じるフォールディングプロペラなどがあります。固定式のプロペラはセーリング中には大きな抵抗になります。何しろ、空気の800倍の抵抗になりますから、フォールディングの方がセーリングには良いわけです。しかしながら、エンジン走行においては、固定プロペラの方が有効に作用します。その他、両方に有効に働くのが、フェザリングプロペラというのがあり、最も高価ではあります。どれでなければならないという事は当然ありません。考え方次第です。セーリング重視なら、できればフォールディングペラが良いかなとは思います。もちろんフェザリングも良い。

エンジンはオイルが循環しますが、長期間ほっときますと、エンジン内部のオイルの油膜が下がってきます。それで、エンジンをかけるとオイルが回ります。この目的だけなら、5分も回しておけば良いかと思います。その他、バッテリー充電という目的もあるわけですが、ある程度回転を上げないと充電量が少ないし、やっぱり乗って回してやるのが一番ですね。

それと、エンジンは低回転では安定せずに振動します。ですから、少し上げて、安定する回転で回すのが良いと思います。また、回転数によっては他との共振もありますので、その回転は避けて。
もちろん、エンジンをかけたら、冷却水が出ているかを確認してください。これは毎回です。ちょっと見るだけですから。

エンジンを低回転で長時間回し続けますと、内部にカーボンが溜まってきますので、時々はアクセルを上げて、吹き飛ばして下さい。

エンジンはオイル点検、ベルトの緩み、間接冷却の冷却水の量、どこかホースの繋ぎ目とかの水漏れとか、燃料漏れとか、またオイル漏れとか、エンジンもきれいにしておけば、異常が解り易くなります。

エンジンについて、詳しくなるのが良いにきまってますが、これがなかなか解らない。それで、エンジンに異常があった時には、できるだけ詳しい状態を報告できるようになりますと、業者も判断がし易くなりますので、修理も早くなります。場合によっては、その場の電話ですぐに済ませられるかもしれません。細かい事は解らないでも、ある程度は理解してください。例えば、プロペラを回すと異常なのか、プロペラを回さないで、スロットルだけでも異常なのか、これだけでも、原因が絞り込める事になります。

エンジンは専門でも無ければ、難しいものですが、頻繁に乗ると、普段の状態が自然に身につきます。音とか振動とかです。あまり気にするのもどうかとは思いますが、時々エンジンルームを覗くぐらいは実行される事をお勧めします。これが意外と、エンジンルームに簡単にアクセスできないヨットは、覗かなくなる傾向がありますから、面倒くさがらずに実行して頂きたいと思います。

エンジンはメインテナンスさえきちんとしていけば、そう簡単には壊れないし、非常に長く使う事ができます。ある本によりますと、5,000時間使って、オーバーホールしてまた使えると書いてありました。いまだかつて、5,000時間に及ぶ使用時間のヨットのエンジンを見た事がありません。
それゃあそうでしょう、ヨットはセールで走るのですから。基本はオイル交換と掃除でしょうか。

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