シングルハンド

何もひとりで寂しく乗らなくても、と思われる方も少なく無いかもしれませんが、シングルハンドができると、いろんな状況に対応できる万能の乗り方になります。クルーをあてにするならば、クルーの都合に合わせる。ならば、誰がオーナーなのか?と疑いたくもなります。ひとりで動かせるならば、クルーの都合では無く、自分の都合で遊ぶ事ができるばかりか、誰を誘っても、躊躇が要らない。そういう意味でも、シングルができるなら、最大の自由を手にする事ができると思います。ですから、ひととおり乗れるようになったら、シングルハンドを目指してはいかがでしょうか?

シングルになりますと、もうひとり居るかいないかとは雲泥の差で、2分の1の差ではありません。
舵を持ちながら、遠いシートに手が届くかどうか、という事は大きな問題になりますし、それどころか、それを操作しなければならないわけですから、最も簡単な物理的解決方法は、舵か、或いは操作の方をリモートコントロールにする事です。当然ながら、現代科学はそれをいとも簡単にやってのけるわけです。舵はオートパイロットという機械で操作され、手を舵から離しても操作できますし、舵を切る事でさえ、リモコンで操作ができます。また、一方のシート操作となりますと、電動ウィンチで操作のボタンを押せば回転してシートを引く事ができます。シートを引くのみならず、現在ではシートを緩める事もできるようになっています。

こういう意味では、シングルハンドというはそんなに難しい問題では無いのですが、ひとつ大事な事があります。それは何の為にヨットに乗るかという事かと思います。ここから、あそこへの移動が主目的であるなら、何の問題も無いわけですが、全てオートマチックにすれば、もっと良いわけです。しかしながら、ヨットは遊びであり、人間の遊びは理屈では無く、行為の楽しみであると思います。
すると、全部オートマチックにしてしまうと、本来の遊びが遊びでは無くなって、単なる移動になってしまう。

そこで、操作を楽しむという本来の遊びを残しつつ、シングルを可能にするという事が必要になります。ちょっと理屈っぽくなってしまいましたが、シングルハンドでセーリングを遊びとして楽しむには、機械頼りもできるだけ避けて、やれるならその方が面白いという事です。野球で、ピッチャーには、ピッチングマシンでは無く、人間を使った方が面白いという事です。でも、9人のメンバーが揃わないと野球ができないなら、足りない部分には仕方無いにしても、できるだけメンバーを揃えるか、揃わないなら、できるだけ多くのポジションを自分が兼ねる。その方が面白い。野球ではそういうポジションを兼ねるという事はできませんが、ヨットなら、いくつかはできます。しかしながら、やり易いヨットとやりにくいヨットがあります。やりにくいヨットは仕方ありませんから、そのポジションには機械を抜擢しょましょうという事になります。

舵を握って操船をするというのは、ヨットのポジションの中でも最も面白いポジションではないかと思います。車で言うハンドルを握る人、アクセルの人、ブレーキの人、ギヤの人という風に分かれるわけですが、中心はやはりステアリングを握る人ではないか。そうしますと、舵は自分で握りたい。後をどう対応するかになります。つまり、舵操作をしながら、どこまでできるか?

まずは、ジブシートとメインシート。これらの操作がひとりでできるか?しかも、リードブロックの移動までできるか?できない程、遠くにあるとしたら、機械を使うか、舵をオートパイロットに任せて、自分が移動してシート操作をするか、という事になり、簡単な話、全部が手に届く位置に配置されていれば、その方が最も面白いセーリングができる事になります。そうで無ければ、機械を使う事になります。

例え、機械を使うにしても、シングルハンドを可能にすれば、前記しましたように、あらゆる状況での対応が可能になりますから、できれば、こういうシングルハンドをいずれの状態にしろ、できるようにしておくのが最も自由なヨットライフを創造できるのではないかと思います。従って、二人で乗るのと、一人で乗るとは全く様相が異なりますが、シングルはハードルが高いだけに難しい面もありますが、何とかできれば、自由にいろんな状況で乗れるという意味では、これからの長いヨットライフを創造するには、非常に良い方法かと思います。ひとりで乗れるならふたりでも乗れるわけですから。

それで、通常のクルージング艇は、シングルで遊ぶ事を前提にはデザインされていない。しかし、その対応を考える事になります。セールを上げる為のハリヤードウィンチは、まだ遠くても、上げる時だけを考えるなら良い。でも、ジブシートウィンチ、メインシートウィンチ、それらのリードブロック移動をどうするか?これらは頻繁に使う物であり、最も面白さの主役を担うものでもあります。その他のバングやカニンガム等はたまの話。

できるだけ舵を持つ事を中心に考えて、それらを操作する事を考えます。ですが、通常の小さ目のヨットに電動ウィンチなんかは使わない。よって、オートパイロットを設置して、できるだけ舵は自分で持つ事を考えつつ、他の操作をいかにするか?そういう事を考えてはいかがでしょうか?

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