第一話 遥か遠くへのロマンと近場の知的、感覚的刺激


      

長年日本に住んで居ながら、日本の事に詳しいかと言いますと、案外そうでも無い。にも拘らず、我々は海外に興味を持ちます。反対に、海外の人達も同じで、彼らは自国に詳しいわけじゃ無いけど、日本に興味を持つ。考えてみれば、自国をまだ知らないし、きっと面白い事もたんさんあるのかもしれないのに。でも、そういうものですね。

クルージングも同様で、遠ければ遠い程、何か面白いものがあるかもしれないと思います。釣りなんかですと、目の前よりも、遥か遠くのポイントの方が釣れそうだと思ってしまう。これと同じ様に、目の前の海域でのセーリングを軽んじてしまいます。そこがデイセーラーがもうひとつ広がらない理由かもしれません。でも、実際は多くの人達がデイセーリングをやってます。ただ、意識していないだけでしょう。

そこで、視点を変えて、近場に注目して、ただピクニックを楽しむだけでは無く、深くセーリングを探求してみるというのは如何でしょうか? 近いけれど深い、やるのは簡単ですけど、探求すると難しい。近くだからこそ、できる事があります。何日もかけて走って、セーリングの探求なんてそうそうできません。近くだからこそできるし、近くだからこそ面白くできる。

クルージングは旅ですが、セーリングはスポーツとなります。スポーツだったら、上達したいと思います。あらゆるスポーツはセーリングよりも、もっと狭い範囲で行われます。面白さは、フィールドの広さの問題では無く、深さの問題ですから、どれだけ深く探求するかによって、その面白さが違ってくる。という事で、セーリングを深く探求するという事をスポーツとして遊ぶのがデイセーリングという事になります。

目の前の海域でできる。ひとりでもできる。それがデイセーラーですが、目指すはシングルで自由自在。勝つとか負けるとか言う概念は一切無く、あるのはスイスイ走らせる事によって得られるフィーリングです。風の強い時、弱い時、どこから吹いて来ようが、ちゃんと合わせて、バランス取って、そのフィーリングを味わう。これは言葉では表せませんが、このスイスイは実に気持ちが良い。

勝つ喜びはありませんし、旅の目に見える風景の変化もありませんが、セーリングには心に感じる、あらゆるフィーリングを重んじるスポーツだと思います。ハラハラ、ドキドキ、ワクワク、その他にも、考えたりもするわけですから、知的なスポーツです。人工的動力を使わないで如何に走らせるかですから、人間の力(腕力では無く)次第かと思います。だからこそ、より多く知る事や技術や、その結果のセーリングに価値があると思います。結局、何が面白いかって、自分の力で、どこまでできるようになれるかではないでしょうか?



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