第三話 フライヤー33 デイセーラー/ウィークエンダー


      

デイセーラーにとってキャビンはあまり重要視されません。何故なら、主役はセーリング、つまり、デッキ上にあるからです。とは言っても、キャビンを無視するわけではありません。御覧の通り、デイセーラーのキャビンはワンルームです。ヨットはセーリングとキャビンに分かれ、クルージング艇ならキャビンをもっと充実させます。でも、それは全体の重量を重くしてしまい、セーリングに影響を与える事になります。

写真はフライヤー33デイセーラーです。バウバースとソファーが左右にあり、その間の左舷側にはギャレー、右舷側にはトイレが隠されています。キャビンをシンプルで必要最低限に抑えつつ、オーバーナイトも考慮され、デイセーラーですが、ウィークエンダーとも呼ばれています。

クルージング艇の様に、ヨットで生活する前提は考えていません。ショートクルージングの1泊か2泊程度、それより、日常的なデイセーリングを如何に面白く、楽しめるかに重点が置かれています。それがデイセーラー共通のコンセプトです。その共通コンセプトにおいても、デザイナーや造船所によって、少しづつ違っています。

もし、このヨットが超速いスピードを目指すとしたら、この内装をもっとシンプルにするでしょう。スピードは軽量化とセール面積の大きさによって、バランスさせます。この写真のヨットはそこまで求めたヨットではありません。でも、充分なセーリング性能を持ちます。デイセーラーはみんなクルージング艇より速い。ただ、その中でもバリエーションがあって、このヨットはその中の中程度。我々一般が充分に自由自在とスピードを楽しめるレベルです。これまでクルージング派だった方は、そのスイスイ感にきっと感激するでしょう。

後部側は下の写真の様になっています。左右の背もたれはステンレスパイプに沿って、前後にスライドさせる事ができます。ここで横になりたい時は、背もたれを後部にスライドさせて、より広いスペースを確保できます。後部側にも広いスペースがありますから、荷物も置けますね。



天井はもちろん、真っすぐは立てません。入ったら座るのが基本です。その分、デッキが低い。よって重心が低い。これもセーリングを重視している表れです。

さて、このヨットの主役はコクピットです。因みに、下の写真では人工チークを張っていますが、これは自然のチークでも対応しています。最近は手入れの関係で、人工チークを採用する造船所が増えてきていますが、これはお好みです。このコクピットは、一見するととてもシンプルに見えます。



コクピット中央の左右の背もたれに四角い穴が見えます。メインシートのトラベラーを見ても解りますが、この四角い穴の中にカムクリートが設置され、つまり、メインのシートやトラベラーコントロールがそこにリードされてきています。これはとっても操作し易い。左右どちらからも操作が可能です。





ジブのファーリングシステムはデッキ下、その前のブロックはジェネカー用、このヨットにはバウポールが必要ありません。エンジンはヤンマーのセールドライブ、標準セールはノースのノーラムです。オプションで3DLセールもありますが、標準のノーラムで十分でしょう。



垂直に切り立ったバウに対し、スターンは大きなオーバーハングを設けています。モダンとクラシックが見事に融合しています。このヨットの暖かい感じでありながら、ハイパフォーマンスという処が好きなんですね。


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