第二十五話 デッキアレンジメント


      

デッキには多くのロープが走っています。どのロープが、どこを通って、どこにリードされているかに寄って、具体的にどういう手順で、どういう操作をするかが決まってきます。上の図面を見ると、どのロープがどの位置に配置されているかが分かりますので、容易に操作をイメージする事ができます。この事は特に、シングルハンドの場合には重視したいと思います。

頻繁に使うロープもあれば、使用頻度の少ないロープもあります。全てを一様に使うわけでは無く、この中には、全く使わないでもセーリングはできるのもあります。だからと言って、それらが要らないわけでは無く、より繊細さを求める場合に使います。ある意味、それは上級者向けとも言えます。

と言う事は、初心者が基本的ロープだけ操作してセーリングはできますし、そのまま上達していけば、全てのロープを操作するようになるし、さらに上手くなれば、それらの操作をより繊細にして、より高い熟練性を示す事もできます。つまり、初心者から上級者まで使う事ができ、その違いは走りの違いとして表される。

上図はシングルハンド仕様を想定しています。初心者だろうが、上級者だろうが、それによって配置が違うという事は無い。シングルハンドとして使い易いかどうか? それが二人かそれ以上なら、配置の仕方が変わってくる。

セールはジブとメインに分けると、ジブはセルフタッキングジブで小さく、その代わり、メインが大きくなっています。つまり、操作する場合、メインの影響力の方が圧倒的に強い。よって、メインの操作を後部側にリードし、シート、トラベラー、メインハリヤードもここにリードしました。舵を握ったままで操作ができるという事がポイントです。

このヨットにはジブブームが付いています。そうしますと、ジブの形状を変化させるシートが1本とセールの角度(ジブブームの角度)を変えるロープを左右どちらからでも操作できるように2本にし、さらに、これを左右の後部ウィンチへリードしました。これに比べたら、このヨットの場合、シート操作の頻度は低くなります。つまり、後部側のすぐ手元には、頻度の高いロープ、そして、前側にはそれに比べたら頻度が低いロープを配置しています。

前側は、ジブファーリングのドラム操作(展開と収納時のみの使用)、ジブシート(テークルを組んで、力を軽減し、ウィンチを使わないで良い操作)、シングルラインリーフ、バング、カニンガム、ジブとスピンのハリヤードです。どれもが、そう頻繁には操作する事はありません。

そうすると、次の様な操作手順が想像できます。沖に出て、手元でメインを上げ、シートを調整、オーパイかけて、前側でジブを展開。これでセーリングがスタートします。後は、必要に応じて、各ロープの出し入れです。実は、この後部側のウィンチは電動にしています。よって、メインハリヤードも後部側にリードしました。

配置はどういう手順で、どういう操作をするかという事が想像できますので、そのヨットの性能やデザインとともに重要なポイントだと思います。但し、二人、三人も居るならどうにでもできるのですが、シングルの場合は、そういうわけには行きませんので重要です。オーパイはできるだけ使わない様にしたいと考えます。セーリングを楽しむ時は、自分の手で舵を握る。舵から伝わる情報を感じ取った方が面白いですから。

と言う事で、デッキに配置されたロープ類の配置、ブロック、ストッパー、カムクリート等々も確認できると、操作が解ります。もし、造船所が受けてくれるのなら、希望の配置を要求しても良いんじゃないでしょうか。また、この配置は操作人数やクルージング艇、パフォーマンス、レーサー等によっても違ってきます。こういう配置と操作手順を考えるのも、楽しいと思います。


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