第三十七話 造船所の条件


      

以前、造船所が造っているのは船体だけだと書きました。艤装品は全て、専門メーカーから調達している。でも、その船体こそが全てを左右する基本です。良いデザインで、真面目にきちんと建造する造船所が良いに決まってます。ハイテク素材を使うのも重要ですが、それ以上に、どんな施工をするかを重視しています。それと、もうひとつ重要なポイントがあります。

それはコミュニケーションです。これまで多くの国の多くの造船所に連絡を取ってきましたが、なかには何週間も一切返事が来ない、何度催促しても音沙汰無という造船所もあって、その後、こっちが諦めた頃に、遅くなって申し訳ないとメールをよこした造船所もありましたが、これなんかは論外ですね。どんなに良いヨットを建造していても論外、と言っても、良いヨットを建造する造船所は、経験上、コミュニケーションも良いです。

ただ、彼らは恐らく世界中からメールをたくさん受け取るでしょうし、中には冷やかしメールも多いかもしれません。そうなると、反応が鈍くなるのも解らないわけでは無いので、こちらも、そこには注意をしてメールします。ただ、困るのは、価格を聞かれた時です。結果的にですが、本気で検討する為ならばもちろん良いのですが、中には興味本位だけで聞かれる事もあります。そうなりますと、こちらも、造船所に価格を聞いただけで終わる事もあります。まあ、いろいろあるんですが、ただ、情報としてだけの問い合わせは、できるだけ慎むようにはしています。何やかんやあって、結局、注文にならなかったというのなら良いんです。弊社も造船所も、全部注文になるなんては思っていません。

新規の造船所の場合、そのヨットについてかなり多くの質問状を送ります。仕様書とオプションリストだけでは全く不十分です。それに対して、きちんと返事をしてくれないと困るわけで、お客様に対して、きちんと対応する事ができなくなります。だから、コミュニケーションが十分とれる必要があります。気の利いた造船所は、今、こういう事情だから少し時間をくれとか言ってきたりしますが、そういう造船所は良いですね。また、造船所側から提案なんかもあります。そんな、気の利いた事を言ってくる場合もあります。まあ、そういう処は多くは無いので、こちらが充分注意します。

現在、カスタム艇を建造していますが、これなんかになると、尚更、濃密なコミュニケーションが必要で、これなしではカスタムオーダーなんかできません。20数年前にもカスタムをやりましたが、当時はメールは無くてファックスでした。そのファックスの紙の枚数が、束ねて10数cm以上にもなった事があります。今は、メールですので、随分助かっています。写真も送れますし。

今は、コロナのせいで、少し返事が遅れたりとか言う事もたまにはありますが、特に支障はないです。発注前のコミュニケーション、それから発注後は、建造プロセスについて時々写真を撮って送ってもらうように必ず要求しています。また、完成後には出荷がありますから、これも遅滞なく、できるだけスムースに進む様に、事前に輸送会社と連絡を取る為にも、やっぱりコミュニケーションですね。

弊社では、輸送会社に、造船所までヨットを取りに行かせるようにしています。その方が確実ですから、そして、港に運ばせて、輸出の手続き、本船への積み込み、そして日本まで一貫輸送してもらっています。それも、これも全てグッドコミュニケーションが条件になります。当然ながら、こちらも相応の対応をしなければならない事は当然です。


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