第五十話 緊張感のマネージメント


      

今日のセーリングは面白かった! なんて感想を漏らす時には、大抵は、緊張感を伴ったセーリングを味わった時だと思います。緊張感は集中力を発揮した時に感じると思いますが、では、どうしたら集中力を発揮できるのか? まずは、そういう状況はどんな時か?

上り角度をギリギリまでつめて、セールはいっぱいに引き込んで、バックステーを引き、アウトホールを引き、カニンガムも必要に応じて引き込む。舵操作は上れる角度ギリギリを狙います。そうしますと、船体は大きくヒールし、25〜30度、これ以上ヒールさせると横流れが大きくなると言われますが、でも、オーバーヒールしても良いじゃないですか。 そのセーリングを楽しむわけです。

舵操作に集中します。わずかでも上りすぎると、セールの裏側に風が当たってきます。かといって、その逆をすると、上り角度を稼げない。ギリギリです。ですから、集中力を要します。それを無心に味わってみます。これって、なかなか面白い、スリルもあります。 とは言っても、ある程度以上の風が無いと、こうはいきません。

風が落ちると、それまでの角度では走れなくなります。セールパワーが弱くなります。従って、セールを少し深くして、上り角度を落とします。その状態で前の角度に近づけようとすると、セールの裏に風が入る。セールが深くなっていますから、その分、セールの角度が落ちている。それでも、この状態でギリギリまで上ってみる。

さらに、風が落ちると、ジブとメインだけでは、スピードは落ちますから、なかなか集中力を維持できないかもしれません。そんな時は、コードゼロがあれば、でっかいライトジェノアみたいなものですから、セール面積は大きくなり、スピードもあがります。それで、また、ギリギリまで上ってみる。但し、コードゼロは、そのコースをある程度長く維持できないと、ちょっと走って、すぐにタッキングしなければならないとかになると、一旦、セールを巻き上げなければならなくなりますので、それでも良かったら、是非、どうぞ。

上り以外で、もっと角度を落として走る時、目標物に一直線に舵を合わせ、風向が変化するにつれて、セールの角度を調整する。或いは、風向に対して、一定角度を保ちながら、舵を風向変化に合わせて調整する。どちらも、風向の変化に注意が必要になります。ここで集中力を発揮する為には、いい加減な舵操作では無く、風向変化に対して保つ角度をピッタリに合わせて走ろうとする意識だと思います。

コードゼロはセールが大きいだけに、風が強いと、大きくヒールしますので、それはそのヨットのスタビリティーとも関係してきますが、微軽風用と考えます。風がある程度以上あれば、ジブとメインで良い。

さらに、下りでも同じですが、ある程度の角度、130度とかまでぐらいなら、何とかコードゼロをそのまま使えるかと思います。そして、走る角度を維持する。もし、ジェネカーを持っているなら、もっと下れます。風が強いなら、プレーニングをするかもしれません。

つまり、面白さとは緊張感にあり、それは集中力を発揮できた時に起こる。そして、その集中力は、意識の問題で、自分で何らかのテーマを持った時に発揮されると思います。もちろん、本当に風が無い時には、無理ですが、でも、できるだけ集中力を発揮できるように、今日のセーリングは何をテーマにするかと考える。

緊張ばかりでは、疲れますので、緊張したら、緩和を楽しむ。その日のセーリングにメリハリをつけて、緊張、緩和、また緊張と創造できれば、面白いセーリングを創造できるのではないかと思います。また、風の状況によっては、緊張感を創造し、別な日には、緩和を楽しむ。ミクロとマクロでの緊張と緩和を楽しむ事もあると思います。

それに慣れてくると、セーリングの演出が上手くなって、いろんな風に対して、いろんなセーリングを演出して楽しめる様になれるのではないでしょうか。それは、大きなセーリングソフトのノウハウになると思います。集中力を如何に発揮できるようにするか? セーリング以外でも同じかもしれません。楽しいにプラス、面白さを加える方法のひとつです。

あらゆる風の中で集中力を発揮するのは難しい。それができるのは達人のレベルかもしれません。でも、少しでもそれができる様になる為には、セーリングについてより深く知る必要があると思います。その事によって可能性は高くなると思います。つまり、上手くなるというのは、腕だけの問題で無く、その腕を使って、如何に緊張感を創造する事ができるか、になるかと思います。つまり、面白さは手の内にある。


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