第五十五話 ピュア デイセーラー


      

近場重視のヨットライフに最適なのが、デイセーラーです。そこに特化したヨットですから、当然ではあります。近場をセーリングする場合は、居住性よりも、やはり機敏な動きで、操船していて面白いというのが必要と考えています。しかも、何度も言いますがシングルハンドで、楽に操船できる処がミソです。

写真はオランダのイーグル38、その他、44,54、それに70というモデルがあります。70でもシングルできると造船所は言います。現代の最新装備をもってすれば、サイズに拘わらず楽に動かせる。昨年の暮れにアメリカでイーグル38が浸水しましたが、ウォータージェットのスラスターが設置されていました。このサイズに必要かどうかは別ですが。兎に角、大きなサイズでも装備の仕方において、シングルでも可能とするというのが現代のヨットです。

電動ウィンチに、メインシートは電動のキャプティブウィンチ、ジブファーラーも電動、おまけにメインセールをブームファーラーにして、バックステイ/ブームバングを油圧式、さらにスラスター設置だと、実に、楽に走らせる事ができる。そういう時代になりました。それは、ただ、楽なだけでは無く、セーリングの妙もちゃんと味わえる。どうにでもできる時代です。

という事で、機能は良いとして、セーリング性能はと言いますと、パフォーマンスクルーザーの性能と考えて良いと思います。ただ、サイズが大きくなるにつれて、スピード性能はもっと高くなります。それは、サイズが大きくなるに従って、排水量の軽減効率がもっと可能となり、それに対するセール面積の比率が高くできるからです。

さて、今度はスタイリングの美しさ。この影響は大きいです。イーグルヨットは、Jクラスを思わせるクラシックなデザインで、デザイナーは世界的に有名なHoekデザイン、ちょっとセーリングしてくるだけでも良い気分になれる事は間違い無いと思います。また、アメリカのクラシックデザインは、また違います。下の写真はアレリオン30です。アメリカ艇は、これまた有名なハーショフデザインの影響が色濃い。

これですとスラスターは要らないでしょうが、やはりイーグルと同じ様に、電動ウィンチを採用しています。もちろん、シングルハンド。このヨットの特徴的な艤装はジブブームで、ダウンウィンドにもジェネカー無しでも走れるというもの。クラシック系デザインでも、同じ様で同じでは無い、異なるスタイリングの美しさがあり、どちらも、時代の流行に左右されない永遠の美しさがあります。実は、今年、このアレリオン30が日本に来ますので、また、リポートしたいと思います。



さて、もうひとつ、クラシックと言いますか、トラディショナルと言いますか、フランスのトフィノーというヨット。これもカッコ良いと思います。フランスらしいデザインと言いますか、実にエレガントなデザインだと思います。写真はトフィノー8です。



さらにもうひとつご紹介したいのがあります。フライヤーヨット、スターンは大きなオーバーハングを持つクラシックスタイルに対して、バウは水面に垂直に降りています。クラシックとモダンの融合デザインと言えます。これも有名なDijikstraのデザイン。



今日、様々な美しいヨットがたくさんあります。なかでも、特にデイセーラーは、居住空間をある程度制限する事が広く認知されるに至り、そこに束縛されずに、より自由性の高いデザインをする事ができる事によって、美しさは突出しているのではないかと感じます。だから、多くのデザイナーが、現実に建造されるか否かは別として、デイセーラーをデザインしたがるんだろうな〜と思います。

デイセーラーはセーリング対居住空間で表すとすると、6:4か7:3ぐらいの感じです。セーリングを楽しむのがデイセーラーのあるべき使い方です。それもシングルで自由自在感を満喫する処にあると思います。そのうえで、好きなデザインを遊ぶ。美しさはデイセーラーにとって重要な要素です。

これで何かを達成しようとかでは無く、その日の風をあるがままに味わう。その中にセーリングの全ての味わいがあるという事だと思います。


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