第七十三話 センスと感性


      

今日のヨットデザインはコンピューターを使って行われます。優れたソフトさえ使えば、そのコンセプトに沿ったデザインをする事ができると言われます。但し、これは性能的にはそうなんでしょうが、それだけでは何かが物足りない。それに乗るオーナーがどう感じるかの感性に呼応するもので無ければなりません。従って、性能に加えて、デザイナーのセンスが問われる事になります。

デザインはデイセーラーか、クルージングか、或いは、パフォーマンスクルーザーとかレーサークルーザーとかに分類されます。そうすると、その目的別に性能を考えるわけですが、その際に全長を決め、幅やフリーボードを決め、水線長を決め、排水量、スタビリティー、セールプラン,そしてキャビン等々が決められていきます。これらの要素は、あるひとつのジャンル内において、ある程度、ある特定の範囲内に納まってきます。だから、同じジャンル内のヨット同士は、大まかには似てくる事になります。でも、各デザイナーによってセンスは異なります。要は、今の時代、問われるのはデザイナーのセンスの違いでは無かろうか?

という事は、同じジャンル内のヨットであれば、デザインを気に入りさえすれば、それを選択して間違いは無いと言えるのではないでしょうか? ただ、似たもの同士とは言え、シート類の取り回し方が違っていたり(最近はみんな似てますが)とかあるかもしれませんし、装備が少し違うとかもあるかもしれませんが、まあ、大差があるとは思えません。価格的にも似た様なものと思います。何しろ、同じジャンルで激しい競争をしているわけですから。

そこで、決め手はやっぱりデザインの美しさではないかと思います。それはデザイナーのセンスによる。これは良いも悪いも無く、個人の主観ですから、とは言っても、とっても重要な要素だと考えます。性能がどうこうと言っても、やはり気に入る事が大切で、その事が、その後の運営に大きく関わっていきます。

これがジャンルが異なるとそうは行きません。性能は違うし、質も違いますから、ジャンルの異なる同士で比べるというのはナンセンスという事になります。ただひとつ、デイセーラーに関してだけは、ちょっと違った見方をする事になります。それは同じデイセーラーでありながら、性能、特にスピード性能の幅が大きく違うからです。もちろん、見た目の美しさは重要ですが、それに加えて、スピードポテンシャルも確認した方が良いと思います。いずれにしろ、シングルハンド仕様ですから、そこは良いとしても、同じサイズでも排水量やセール面積が大きく違う事があります。まあ、慣れると、見た目で、それも予想がつきますが。

上のイーグル38、下はB38、どちらもデイセーラーコンセプトのヨットです。同じデイセーラーでも、これだけデザインセンスが異なります。そして、B38の方が速そうに見えると思いますが、まさしくその通りで、何のデータも無くても、見た目でわかる事も多いものです。因みに、B38のSADRは30で、Eagle38は25です。25でも相当速いですが、30はもっと速い。どっちが良いかはデザイナーのセンスに対するオーナーの感性という事になるかと思います。つまり、ヨットの選択は感性で選ぶのが正しい。




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