第八十一話 次世代のファーリングジェネカー


      

日本では、まだそんなにジェネカーの使用率が高いわけでは無いと思います。しかし、ダウンウィンド用のセールはどんどん進化してきており、昔はスピン(今も使われますが)、これにはクルーも必要だし、スピンポールを必要とし、取り扱いも複雑でしたので、セールを持っていても、殆ど使っていないというケースも少なくありません。

その後、ジェネカーというスピンポールを使わないで良いダウンウィンド用のセールが開発され、レーサーも含めて多くの方々が、これに移行されてきました。その後、このジェネカーをより取り扱いし易い様にと、ソックス(長い袋)に収納した形で上げて後、袋を取って展開、収納する時には、再び袋に入れてから降ろす。このシステムの詳細についてはここでは書きませんが、兎に角扱いやすくなりました。

さて、さらに取り扱いをし易くという進化で、その次はと言いますと、ジェネカーのファーリングシステムです。ファーリングのドラムに捻じれにくいアンチトーションロープを使って、セールのタックはドラムとアンチトーションロープのトップだけがこれに繋がり、セールのラフはフリーです。ドラムを回転させると、そのアンチトーションロープを伝って、回転力が下からトップ側に伝わり、セールのトップ側から巻き取る事ができます。トップ側からなので、トップダウンファーリングとも言われます。


さて、次世代のファーリングジェネカーとはどんなものか?実は、このアンチトーションロープは捻じれにくくする為に密度は高く、ある程度硬い、硬いが故に、小さく折りたたむというわけにはいきません。そして、少々重い。しかしながら、従来の方式、長いソックスの袋に比べると、ファーリングできるというのは画期的だったと思いますが、時が経てば、そのデメリットもより見えてきます。それで、この次の世代としては、このアンチトーションロープを使わない方式へと発展していきます。

セール生地は例えば0.75オンスだったとしても、ラフ部分だけ、2オンス程度の生地にして、そこにカーボンやダイニーマのマイクロファーバーを貼り付けています。そういう細くて強い繊維を1本では無く、ある程度の面積に敷き詰めています。これはセールの一部であり、そのラフ部分に敷き詰める事によって、ここがファーリングの軸になる。これで、アンチトーションロープを使わないので、軽くなるし、しかもフレキシブルで、収納等もし易い。これはIFS(Interated Furling Structure)と言われます。ファーリングの構造が内臓されているという意味ですね。それが上のビデオの30秒ぐらいの処で示されています。

セールの見た目は通常のジェネカーと変わらない。マリーナを出航する前にセールを上げておいて、セーリング後は、マリーナに戻ってから降ろす事ができます。これは従来のファーリングも同じなのですが、兎に角、軽くなって、取り扱いがし易くなったという事です。また、このIFS方式はセールの形状を限定する事は無いので、例えば、セール形状を考えて、ハリヤードテンションを上げて、コードゼロの様な上り、逆に、ハリヤードテンションを緩めて、より下りという具合に、一枚のセールで、ある程度使い分ける事も考えられると思います。

ビデオはONESAILSというイタリアのセールメーカー、日本では知られていないかもしれませんが、当然ながら、ジェネカーだけでは無くセール全般に渡って、、独特の技術をもって、特に、ヨーロッパではかなり広がりを見せている様です。実は、日本にも既に代理店があります。ご興味ある方は相談されたら良いかと思います。 https://www.onesails.com/ja/japan-loft

進化というのは有難いもので、どんどん使い易くなっていきます。ますますセーリングの面白さを身近に感じる事ができますね。。


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