第九十三話 スポーツカー 


      

スポーツカーは憧れ、これに実用性なんか期待しない。見た目にカッコ良くて、美しくて、それでハイパフォーマンス。運転して、そのパフォーマンスを味わうのが目的ですから、トランクに荷物をどれぐらい積み込めるかなんて気にしないし、何人乗れるかなんて、4シーターでも後部座席が狭いとか、そんなのは気にしない。それがスポーツカーです。こんな車でドライブしたら、例え、走りにこだわりを持たない人だって、気持ちは良いでしょう。ただ、実用的で無いだけに、2台目、3台目の車となり、スポーツカーは純粋に楽しむ為の車です。でも、それがとってみ魅力的。

さて、それとコンセプトが近いのがデイセーラーだと言えます。実用性が低いとは言っても、他の全てのヨットに実用性などは無く、純粋に遊ぶ為に使われます。ですから、もし、ロングのクルージングに興味が無いとか、そんな暇が無いとか、船内に寝泊りしても、せいぜい1拍か2拍程度であるなら、それより、スポーツカー的なセーリングの味わいを獲得したいなら、やはりデイセーリングが良いし、ヨットなら、2艇目、3艇目では無く、1艇目としても成り立ちます。

デイセーラーは速く走る為に、船体の軽量化に努めます。でも、シングルハンド前提なので、セールは比較的小さ目、同サイズのクルージング艇より小さい。だから、取た扱いもし易い。にも拘らず、速く走れるように,さらなる軽量化が成され、しかも、セーリング中のより高いセールフィーリングに応える為に、船体剛性が高く保たれています。スピードだけではありませんね。セーリング重視には、それが必要です。スポーツカーだって、ボディ剛性とか足回りの強化とか、いろいろ見えない箇所に手が入れられています。ただ、速く走るだけを楽しむわけじゃ無く、セーリングのあらゆる動きを味わい、楽しみます。

もし、シングルかゲストを呼ぶにしても、それで、気軽に出せて、高い質のセーリングを2,3時間でも走り回って、高い質のセーリングそのものを味わってくる。そういうのがお望みであれば、デイセーラーは最適だと思います。同じ事をクルージング艇でもパフォーマンスクルーザーでも出来るでしょうが、でも、そのフィーリングは全く違うものです。 フリーボードは低く、当然ヘルムポジションも低く、コクピットは海面に近い。ゲストだって、その感覚は実にエキサイティングになるのではないかと思います。

スポーツカーだって、いろいろあります。デイセーラーも同じで、世界からいろんなタイプが建造されています。スピードバリエーションが幅広いのも、デイセーラーの特徴のひとつです。どのレベルを選ぶかは、オーナーの感性次第です。しかも、全てシングルハンド仕様なのです。だから、全く未経験のゲストを招待しても、全く問題はありません。オーナーひとりで全て完結出来るのですから。逆に、ゲストにちょっと手伝わせて、その味わいを楽しんでもらう事も一興ではないかと思います。

デイセーラーの得意とする処は、オーナーにセーリングそのものを楽しんでもらう事です。その他、近場なら旅も行けるし、泊りもできる。でも、それはおまけみたいなもので、セーリングを楽しんでこそ、おまけも楽しめる。セーリングを如何にと考えられたヨットが、デイセーラーです。スポーツカーもやっぱり同じでしょう。

そこで、今年の夏、アレリオン30がやってきます。オーナーには大変申し訳無いのですが、世界的なコロナ禍とはいえ、納期が長くなり、大変ご迷惑をおかけしてしまいました。このアレリオン30は、もちろんステアリングホィール、電動ウィンチを備えています。マストはカーボン製です。となりますと、セーリングに期待が高まります。また、ジブブームを備えていますが、このブームの左右へのコントロールは、左舷、右舷の両方にリードし、しかも、ヘルムコントロール出来るように変更しています。このコントロールはジブシートでは無く、セルフタッキングですので、シートは1本、ジブシートでジブセールを浅くしたり、深くしたりし、ジブブームのコントロールで、左右の角度を調整します。角度コントロールがセールに変更を与えず制御できますし、逆に、メインセールの様に、シートがセールの角度に影響を与える事がありません。

シングルハンドで自由自在にセーリングを操作するに最も近道なヨット、艤装と言えるかと思います。下の写真はその現物のアレリオン30です。造船所で完成したしたばかりです。ハルはオールグリップ塗装で、紫外線に強い。実に待ちに待ったヨットです。日本に入ったら、またリポートしたいと思います。





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