第二話 コンセプト

   
   

造船所はどんな使い方をするオーナーかを想定してデザイナーにデザインを依頼して、建造していきます。と言ってもひとつの造船所がいろんなコンセプトを建造するわけでは無く、だいたいこの造船所はこういうコンセプトのヨットを建造すると決めています。何故なら、ひとつひとつ建造方法が変わると混乱しますから。やるとしても別ラインという事になるでしょうね。という事は造船所のブランドでコンセプトが解ります。

様々なコンセプトの中で最も数が多いのが沿岸用クルージング艇です。皆さんが最も目にするヨット、ブランドも多いです。何しろ数多く売れるとなれば建造側も増えますね。これは読んで字の如く沿岸をクルージングして楽しむ事を目的にしています。最近のこのコンセプトのヨットはキャビンがかなり拡大してきました。全長は同じでも幅が広がり、デッキは高くなり、中央からスターンにかけて殆ど絞らずコクピットは非常に広い幅広です。後ろから見たら何フィートか解らないでかいヨットに見えます。そのせいでキャビンは広々、ヨット滞在し泊まる事の負い欧米人によっては有効に使えると思います。

これに冷蔵庫や電子レンジ、温水、トイレとは別にシャワールームを設けたり、兎に角自宅での快適さをそのままヨットに再現しようというわけです。さらに、さすがに標準ではありませんがエアコン設置もあるし、その電源を陸電から取る。或いは大きなヨットで余裕があるなら発電機を設置する。この様な快適生活を追求してきました。

家族や仲間との沿岸の旅、みんなでヨットに泊まって旅を快適に楽しめる。その操作にしても電動ウィンチやバウスラスターやファーリング装置の導入もあります。これだからこそ最も数多く売れる理由でしょう。また、サイズも豊富で60フィートオーバーのサイズもあります。

但し、沿岸用を想定していますから外洋艇では無い。沿岸でしたら本当に時化てきたら近くの港に逃げる事が可能ですが外洋でしたら乗り切るしかありません。そこが外洋艇との違いになりますが、普通はこの沿岸用で十分に使える。それに大量生産艇になりますから価格的にも最も安く販売できます。

殆どの使い方として大洋を渡る様な乗り方をされる方々はそうはいません。日本一周するにしても沿岸です。ですから問題は無いわけです。だから最も売れる。だから大量生産の造船所は多くなる。海外からヨットで日本に来る人達が結構いますが、だいたいこういうコンセプトのヨットでは来ないですね。外洋向きじゃ無いから、でもそうでもしない限りこれで十分楽しめます。もし家族と国内の船旅を楽しみたいならこのコンセプトでしょうね。但し、シングルハンド向きではありません。腕に自信がある方にとっては可能にする方もおられるでしょうが、そういう想定は建造側は想定していないと思います。でも、旅でしたら仲間と一緒の方が楽しめますよね。

という事でまず最初により多くの方々が考えられるコンセプトは沿岸クルージング艇という事になると思います。どのブランドがそれにあたるか、各代理店に聞いて下さい。そのブランドを知ることまずは第一で、いろんなブランドから好きな艇を選んで良いと思います。同じぐらいのサイズ、価格、同じコンセプトならそう違いはない。また、同じブランドででかいサイズ50とか60とか、でかいからといって外洋艇とは同じブランドなら言えないと思いますよ。まあ、代理店に聞いてください。


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