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前話の沿岸用クルージング艇とは別に外洋クルージング艇と言うコンセプトを持つヨットがあります。沿岸と外洋ときっちりした規定があるわけでは無いと思いますが、外洋を走る時はたとえ大時化になってもどこかの港に逃げられないで乗り切らねばならない。つまり海岸から遠い、そういう想定があると思います。ただ外洋と言っても世界中どこにでも行けるという外洋からそこまでの範囲を想定しているわけでは無いが、明らかに沿岸艇とは異なる質の高さを誇るというのもあります。
例えば、スウェーデンのアルコナヨットですがコンセプトとしては外洋パフォーマンスクルージング艇で、波高7mで風速28mの中を最低でも5日間以上の単独連続航行を可能としています。これなんかは外洋艇ですが世界どこでもという想定があるわけでは無い。飛び飛びに行けば可能でしょうが。このアルコナの航行区域の想定は上記の通りですが、通常のクルージング艇とは違いセーリングパフォーマンスを重視しています。つまり、船速が速いと一日に走れる距離も長いというわけです。また、この事は望めばレースにおいても良い成績が残せます。
つまり外洋と言ってもいろいろあって範囲は広い。どの造船所(ブランド)がどう言う想定をしているかはそれぞれです。それで沿岸艇と外洋艇の違いというのは船体の頑丈さだと思います。波とか風とか外洋では桁違いになる可能性があってそれを乗り越えていく船体の頑丈さが必要だと思います。また、上記のアルコナヨットで言うと、その頑丈さを得たうえでパフォーマンスを高める為には船体の軽量化も重要になります。そこが難しいところです。
どの範囲の外洋艇なのかは何も規定がきちんとしているわけじゃない。ヨーロッパのCE規格にしても何であのヨットがオーシャンのAを獲得できるのか?と疑問に思わないでもありません。そこらは各販売店に聞いてもらえればと思います。
次に安定性について。よくバラスト比という言葉を聞く事があります。大洋に出れば想像できないくらい大きな波に遭遇するかもしれない。それを横から受けたりするとヨットがひっくり返る事もある。するとキールが上になってマストが下です。この時バラストが軽く、尚且つ船体の幅が広くて船体重心が高いとひっくり返ったまま安定してしまうかもしれません。でも、バラストが重く船体全体の重心が低いと起き上がり易くなる。こういう要素も必要でしょうね。これで言うと沿岸ではそんな大きな波は来ないので、その場合の安定性を考えるなら船体重心に対してセールエリアの関係で考えた方が良いと思います。
さて、この外洋艇、外洋に行かない限りは、沿岸で乗る分にはどうなのか?船体が頑丈だという事は波のプレッシャー、セールが受ける風のプレッシャーに強いわけで実際に時化の中を走ってみると安心感この上ないと思います。身体も楽に感じます。ですから、外洋艇を沿岸で乗るにしてもメリットは大きいと思います。その場合のお薦めはやはりパフォーマンスクルーザーです。何故ならセーリングをより楽しめるしクルージングとしての安心感も高いからです。また取り回しもし易い。
昔は種類があまり無かったのですが、今日ではどういう海域を何を求めて乗るかという細分化が進んできました。そうするとどうなるかと言いますと細分化された目的にもっと進化していきます。という事はそれぞれのコンセプがよえり明確化していきます。よって目的が合えば昔のヨットより快適になってきたと言えます。ですが、裏を返せば目的とヨットのコンセプトを違えると快適さがあまり感じられないという事もあります。
と言いましても難しい事では無く、沿岸か外洋か? 外洋ならどの程度か、そのうえでセーリングパフォーマンスをどう考えるかぐらいです。 パフォーマンスはスピードだけでは無くセーリングの質という事もあります。それがヨットの建造品質と考えても良いんじゃないかと思います。
因みに上の写真はトリンテラというアルミ製の外洋艇です。
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