第五話 パフォーマンスクルーザーの価値

   
   

時にレーサークルーザーという呼び方しますが、要は旅における要素を持ちながらセーリングパフォーマンスも重視したヨットです。このジャンルにも幅があります。シンプルな内装から豪華で造り込んだ内装を持つヨットもあります。幅があるという事は、これも分割したコンセプトに分けた方が良いのかもしれません。ある造船所曰く、現代はデザインにコンピューターを使いますが、良いソフトを使えば速いヨットをデザインする事は難しくはないと言います。でも、速い上に旅の要素を十分発揮させる事は簡単じゃ無い。単に軽量化と大きなセールを設置すれば良いという単純な話では無い。ましてや外洋性を持たせるとなると尚更。

また、このジャンルには外洋性を備えたモデルもあります。こういうヨットは船体も強靭で普通にセーリングする時でも違いが感じられます。時化ても安心感もあります。沿岸セーリングは沿岸用ヨットで十分間に合いますが、こういうパフォーマンスクルーザーの外洋性を持つヨットで沿岸にしてもセーリングするとやっぱり違いますね。

外見的に一般の沿岸用クルージング艇とはその違いが解らないかもしれません。大きなメインと小さなジブという構成は変わらないもののメインシートを取る位置がブームの後方にある事は大きな違いです。これは操作上近いという事もありますが、メインセールには大きな風のプレッシャーがかかりますからブーム中央あたりで引くのと後方で引くのとではブームにかかる負担が全然違いますし、操作する側にとってもより大きな力が必要になります。余談ですが、カスタム47を造った時、コンセプトはパフォーマンスクルーザーでしたがオーナーのご希望で大きなビミニトップを設置したいという意向がありました。そうするとブームエンドにメインシートがあるとそれができませんので、メインシートの位置をクルージング艇の様に前側に移動させましたが、操作パワーの方は電動ウィンチでしたので良いとしてもブームへの負担を考えてブームを補強してもらった事があります。

このジャンルのヨットはいずれもセーリングパフォーマンスを重視していますが、内装についてはシンプルなのもあり豪華なのもあります。幅がありますが、旅をするにしても比較的シンプルな内装でも十分と思える事もあります。また、外洋性については各造船所によって違ってきます。いずれにしてもレーサークルーザーのレーサーという名前に最初から拒否してしまうのはもったいない。こういうヨットはセーリングして面白いしロングの旅も楽しめるのでもっと増えても良いのにな〜と思います。もちろん海外では多いです。

最後にこのジャンルのヨットでレースを楽しむ人達も多いです。純レーサーとは違っていろいろ使えます。セーリングに良し、旅に良し、レースにも良し、いろんなジャンルの中では万能ヨットかもしれません。


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