第八話 デイセーラーを見直す

   
   

昔からデイセーラー推しなのですがそれは今も変わりません。高いパフォーマンス、気軽にシングルで操船できて、そして何より美しいクラシックデザイン、かと言って水線以下はモダンデザインという融合が非常にうまく仕上がっている。

居住空間に関してはヨットの全長における制限は同様ですが人間の背の高さに対する縦と横の幅を広げて居住空間を広げてきたのが現代のヨットの特にクルージング艇のデザインです。それに対してそういう空間を制限してでも美しさを追求したのがデイセーラーだと言える。

何日も連続して走り続ける事は考えない。近場で十分楽しめる。近場と言っても小さなサイズでも1泊か2泊、大きなサイズならもっと広範囲な区域も考慮に入って来る。と言ってもこれはキャビンのスペースから思う範囲です。つまりデイセーラーはキャビンに関してはクルージング艇に比べて狭いからです。何故、そういうデザインにしたのか? クルージング艇と全長は同じでも幅は狭くデッキの高さも低い。普通はライフラインも無いので乗り降りは非常に楽なんです。

デイセーラーはセーリングを気持ち良く味わうのが基本ベースにある。それがこのヨットのコンセプトです。クルージングもできるがそこに重きを置いていない。しかもひとりで気軽に出してセーリングを堪能してくる。それがコンセプトです。クルージングはあくまでそれもできますよというぐらいでそこを主にしてはいない。

コクピットに座って全てを操作できる。安定性も高く、排水量は軽く気持ち良いぐらい良く走る。だからと言ってレーサーでも無い。そんな前提はありません。参加しても良いがそれが主では無い。セーリングの質を高めグッドフィーリングを味わう事を目指している。

ならば日常の気軽なピクニックでさえ気持ちよくセーリングを味わえると、これは何とも嬉しい。ゲストにさえもまた乗りたいという気にさせる。そして真剣にセーリングに取り組む時もヨットは良く反応してくれてセーリングの面白さが解ってくる。レースに出なくてもセーリングそのものが面白いのです。勝敗だけが全てでは無く、また速いだけが全てでは無く、その時々の気持ちがどうかなのです。

それを支えるのが船体の剛性の高さです。硬くて頑丈な船体は外洋性の為では無く風や波からの大きなプレッシャーに耐えられる船体。これがセーリングに滑らかさをもたらします。船体が捻じれたり、瞬間的にへこんだり、そういう事は安全性に問題が無いとしてもフィーリングに関わってきます。剛性は船体の構造、内側からの補強から来ます。でも同時に排水量を重くしたのでは意味を成さなくなります。その両立をする事によって高いパフォーマンスとグッドフィーリングが得られる。

長旅を考える方には向かない。別荘にするにしてもキャビンが狭い。大勢を乗せるにしても同様です。でも、日帰りを中心にウィ―クエンドから数泊の旅までで気軽なピクニックから真剣なセーリングを味わいたいという特に忙しい方々には良いんじゃないかと思います。しかもシングルでできるのですから誰でも誘う事もできる。

クルージング艇は居住性、レーサーは速さ、デイセーラーはセールフィーリングです。多くのヨットが動かないか近場です。そんな現状においてはデイセーラーのグッドフィーリングを味わってみてはと思います。それが近場を重視する唯一の目指す処ではないかと思います。遠方へは旅という主目的があり、それがクルージング艇であり、近場にはセールフィーリングという主目的があり、それがデイセーラーというヨットです。


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