 |
もう30年以上前の話ですが、イギリスの郊外で通りかかった道路脇に建築中の一家屋があり、あれを指してああいう家は何年持つかを聞いた処、まあ、400年ぐらいかな〜との応えが返ってきました。日本の家屋ではそうは行かない。もちろんメインテナンスしながらの事でしょうが、だいたい外観は古い感じはしても中に入るととても綺麗になっている。
海外では大金持ちでも中古の家を購入する事は普通にある。何も新築にこだわるわけじゃない。もし新築なら何年も持たされるけど中古ならすぐに入れる。これはメガヨットの世界でも同じで何年も待ちたくない大金持ちがたくさん居て、それを狙って受注の前から新しメガヨットを建造しながら販売するビジネスもあります。これなら年内に完成できますよとかアピールする様です。もちろん中古でも人気が高いのは即納状態にあるからかもしれません。大金持ちにとって時間が重要だと考えるのかもしれません。
日本はだいたい新しい物にこだわる事が多いんじゃないかと思います。それはそれでこっちも新艇を売りたいし良いんだろうと思いますが、今日一般ヨットでも長い寿命である事が解ってきた。20年や30年で寿命ならそうはいかないがもっともっと長く使える事は間違い無い。にもかかわらず日本ではメインテナンスが重要とは解っていながらそれほど実際はメインテナンスが十分に実施されているヨットはそう多くは無い。だから日本の中古艇は世界的に見たら安い様に思えます。
これから日本にヨット文化が根付く為には、ボートも同様ですが、中古ヨットが十分なメインテナンスを施されていく事が必要なんだろうと思います。そして当然ながら中古艇の価格も上がります。だからこそ何十年でも市場で販売できる様になれる。そうすると多少高くても新艇より安いわけで長く長く乗り継がれて行きます。日本にヨット文化が根付くとするならこのメインテナンスが実際に十分施されるようになる事が条件になるのではなかろうか?
以前トルコに行った時の事ですが古いヨットをレストアしていました。これだけフルレストアすると新艇以上の費用がかかる。でもオーナーに言わせると、このヨットはもはや新艇として建造されていないんだとか。世界を見渡すと実にいろんなヨットがあります。もちろん今時のヨットもたくさんあります。しかし個性豊かな古いヨット、それもピカピカのヨットも多い。歴史が違うし、ヨット以外の先述した家もそうですが中古に対する意識も違うわけですが、そうなって行った歴史もあるでしょうが、新しい物がどんどん古い物と入れ替わっていくばかりだと文化としては根付かないのかもしれません。新しい物は常に古くなっていくし、その古い物にメンテナンスを施していく慣習が長持させるし、しかも、古いのも最新の便利機器を導入していたりもします。決して新しい物の方が古い物より優れているとは限らない。特に人の感覚を重視する物はそういう事があります。便利だけを求めているわけじゃないから。もちろん古けりゃ良いってもんでも無い。
という事で日本にも古いヨットが増えてきました。それらを年式が古いからと二束三文で売るばかりでは無く、それらにも価値を与えよう。その為には十分メインテナンスが重要になります。海外では新艇価格以上の価格がついて居る事もあります。何十年もメインテナンスが施されて、それが主流になるならそれはヨット文化が根付いたと言えるんでは無いでしょうか?何故ならそんな継続的なメインテナンスをするという事はオーナーが自分のヨットを大切にしている証拠ですから。その気持ちが全体的に共有されるという事はそういう高い熟度になったという事ではないかと思います。熟するから文化になる。みんなが大切にするから文化が根付く。そういう状況を見てみたいですね。二束三文のヨットなんて見たくないですね。
|
|